マトリックス (映画)

概要
CGを多用した斬新な映像で映画界に革命を起こしつつ、同時にメタファーや暗示に満ちたストーリーで信仰と哲学という奥深いテーマの表現も両立させた作品であり、1999年のアカデミー賞では視覚効果賞、編集賞、音響賞、音響編集賞を受賞。ワイヤーアクションやバレットタイムなどのVFXも、話題となった。
作品はウィリアム・ギブスンから日本のアニメまで様々なものに影響を受けた上で、特にジャン・ボードリヤールの哲学を基調としたとウォシャウスキー兄弟は語っている。実際、後述する「MATRIX」という単語自体が、ボードリヤールの著書『シミュラークルとシミュレーション』の中に掲げられており、これが出所となったという見方もある。作中では、ハードカバーのボードリヤールの本が映るシーンも見られる。2作目からボードリヤール本人をアドバイザーに迎える計画があったが、断られたという。
ウォシャウスキー兄弟曰く、脚本の大部分はレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの『Wake Up』を聴きながら書き上げたとのこと。映画でもエンディング・テーマに起用されており、そのバンド名やその活動自体が正にマトリックスの世界そのものとされている。
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「MATRIX」という語
映画では、コンピュータの作り出した仮想現実を「MATRIX」と呼んでいる。
「Matrix」はラテン語で母(mater)から派生した語で、母体という意味であり、英語などヨーロッパの諸言語で、「そこから何かを生み出す背景」「基盤」「基質」といった概念を表す。
コンピュータにおいては、座標変換(状態変化)の式である。劇中では画面バックに流れている緑色の文字記号が根源(ソースコード)、すなわち「ソース」と呼ばれている。従って「MATRIX」とは、ソースをMATRIX変換によって仮想現実上の様々な事象に変えていくシステムと捉えられる[3]。
詳細はマトリックスの項目を参照。
あらすじ
トーマス・アンダーソンは、大手ソフトウェア会社のメタ・コーテックス[4]に勤めるプログラマである。しかし、トーマスにはあらゆるコンピュータ犯罪を起こす天才クラッカー[5]、ネオという、もう1つの顔があった。
ある夜、とある人物(モーフィアス)を探していたネオの所へ、その人物から「白ウサギ[6]に付いて行け」とのメッセージが届く。やがて、今まで現実と思っていた世界が、コンピュータの反乱[7]によって作られた「仮想現実」であることを知らされたネオは、人類が養殖されている現実世界で、人工知能との戦いに巻き込まれていく。